この一言で、全てが動き出した。
―これは、11月の全てを無限ルリパンに注ぎ込んだ漢による、栄光と挫折の物語である―
1.発端
11月8日 都内某所何の変哲もない、通常のウィクロスパーティー。
しかし、とある"噂"が筆者の思考を刺激した。
「<スイカアイス>に<MOUNTAIN ICE>を使い、緑アクセを大量に付けると、<ディストラクトアウト>で無限に殴れるようになるらしいですよ。」
理論上可能なことは知っていたが、机上の空論だと思っていた。
「デッキ・トラッシュを0枚にし、リフレッシュに入らない状態を作る。
すると、<ディストラクトアウト>のアタック時に0枚落としを宣言し続けることで、ルリグが無限に殴ることができる。」
デッキ・トラッシュを0枚にするということは、大量のカードを手札やエナに送り込む必要がある。
1回リフレッシュに入れ、トラッシュをリフダメの1枚だけにしてから、デッキを全てエナに移すのだろうが、落ちたリフダメをどう回収するのか?
<ディストラクトアウト>の、このターンに他のアーツを使用できないという制約に対処できるのか?
そして何より、例えルリグが無限に殴れたとしても、相手がルリグ止めアーツを入れていたら一発で止まってしまう・・・
無限ルリパンを決めるには、事前準備に多くのターン数を要するし、ルリグ止めアーツ1枚で止まってしまう。
実戦的ではないし、他の手段で勝った方が早い。
そう切り捨てていたところに、今回の噂話である。
非常に価値ある情報だと感じた。
「ルリグ止めアーツで止まるのなら、アーツを使わせなければ良い」
単純な発想だが、どう実現するか?
<ディストラクトアウト>の、他のアーツを使用できないという制限が重くのしかかるが、そこに回答が生まれた。
「2ターン目に無限ルリパンを仕掛け、相手のエナが貯まる前に撃破する」
何とも荒っぽい発想だが、「相手が高レベルにグロウし、態勢が整う前に猛ラッシュを仕掛ける」という止めデッキの利点を最大限に活かせるではないか。
しかし、そんなに上手く行く訳が・・・
半信半疑ではあったが、物は試し。
家中の緑アクセをかき集め、試しに回してみることにした。
2.実現への道筋
まず結論からだが、無限ルリパンは「成功」した。はっきり言って驚いた。
こんなに容易く実現するとは・・・
簡単に解説しておく。
緑アクセの起動能力で、<スイカアイス>に付けることで、<スイカアイス>効果で1エナチャージすることができる。
この時緑アクセがエナに落ちれば、エナの総量を変えることなく、デッキの枚数を1枚減らすことができる。
この動きを何度も繰り返すことで、デッキの全てのカードを<スイカアイス>の下に敷くことができる!!!
・・・で済めばそれで良いのだが、実際には色々と乗り越えるべき問題が存在する。
当然ながら、デッキには<スイカアイス>と<MOUNTAIN ICE>を投入する必要があるし、<ディストラクトアウト>を使うための黒エナ要員を投入する必要がある。
また、0コストでアクセできる起動能力を持つ、LB持ちの緑アクセは<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の3種しか存在せず、最大12枚しか投入できない。
緑アクセ以外が落ちた場合、<スイカアイス>に付けられない、不要なカードがエナに落ちてしまう。
では、どうすれば良いか?
答えは単純だ。
「初めに複数枚の緑アクセをエナに置いておく」
つまり、アドバンテージを稼ぐ手段が必要という訳だ。
これを2ターン目に揃える必要があるが、トップドローのみに頼るのは厳しい。
かといって、両方4枚採用すれば良いかというと、そう単純ではない。
1番目の問題と関連するが、緑アクセ以外のカードを増やすと、エナに落ちた時の処置が面倒だ。
可能な限り、緑アクセ以外のカードの採用枚数は絞りたい。
では、どうするか?
「サーチ手段を用意する」
実は、アドバンテージを稼ぎつつ、カードをサーチできるという、都合の良いカードが存在する。
答えは後で分かるが、それは何なのか、考えてみてほしい。
そう、リフレッシュダメージの1枚分がトラッシュに残ってしまうのだ。
<ディストラクトアウト>を使ったターンには、他のアーツを使用できない。
一見困ったようだが、便利なカードが存在する。
トラッシュからカードを回収できるキーが存在するのだ。
更に1エナチャージができ、非常にオイシイ。
だが、1つ落とし穴が存在する。
落ち着いてテキストを読んでみてほしい。
「あなたのトラッシュから無色ではないシグニ1枚を手札に加える」
カードではない、「シグニ」なのだ。
おわかりいただけただろうか・・・?
―リフレッシュダメージで<MOUNTAIN ICE>が落ちた時点で、敗北が確定する―
勿論、全ての<MOUNTAIN ICE>がライフに埋まっても、動き出せずに敗北してしまう。
1枚のみではライフに埋まるリスクが大きいが、4枚採用もまた危険だ。
2枚が妥当なところだろう。
しかし、2枚採用でもリフレッシュ後に敗北する博打タイムは訪れてしまう。
だが、単純な賭けかと言うと、そうとも言えない。
ウィクロスには、「マリガン」というシステムが存在する。
もし初手で<MOUNTAIN ICE>を引けたのなら、それをキープすることで、<MOUNTAIN ICE>がライフに埋まる危険性を軽減することができる。
当然だが、<MOUNTAIN ICE>は最優先でキープしなければならない。
3.実演
文字だけの説明では退屈だろう。ここからは、4枚の写真を用いて実際の流れを解説する。
まずは1枚目。
の2点を目標に動いていく。
一気に先攻1ターン目の終了時まで進んでいて分かりづらいかと思うが、以下の順序で進める。
- (1)<クギニ>を出し、緑アクセを2枚置き、1ドロー
- (2)うち1枚をコストに、<一蓮托生>を使用し、<スイカアイス>&<MOUNTAIN ICE>をエナに置く
- (3)<スイカアイス>&残りの緑アクセをコストに<ドローフォー>を発動し、4枚ドロー
- (4)<ビカムユー>で<スイカアイス>を回収しつつ、1ドロー
- (5)<猛威継承>を使用し、手札に<スイカアイス>&<MOUNTAIN ICE>を抱えつつ、大量の緑アクセと黒いカードを1枚エナに置く
ちなみに(1)では、緑アクセが初動で2枚エナにある状態を作りたい。
片方は<一蓮托生>、片方は<ドローフォー>のコストに必要となるからだ。
<クギニ>を引けていれば簡単だが、引けなければエナフェイズに1枚チャージ+<スイカアイス>に<ツナマヨ>を手札からデコレしても実現可能だ。
エナだけ考えると、デコレするアクセは何でも良いが、アドバンテージが重要な1ターン目では、可能な限り<ツナマヨ>での1ドローを狙いたい。
写真では、<猛威継承>後の手札に<スイカアイス>が4枚居るが、勿論こんなに必要ない。
偶然の結果に過ぎず、緑アクセをエナに、残りを手札にという形で分ければ良い。 また、黒エナ要員に<ボツリネス>を採用したが、特に拘りはない。
ただ、「対戦相手のすべてのシグニゾーンに【ウィルス】を1つずつ置く」というLBのテキストが、相手の思考を乱せるのではと思っただけだ。
但し、黒スペルやサーバントは避けておきたい。
リフレッシュダメージで捲れた時に、<鎮護国禍>で回収できずに敗北するリスクが高まるからだ。
上述の通り、LB持ちの緑アクセは<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の3種しか存在しないことから、LB枠に余裕ができやすい。
よって、LB持ちの黒シグニであれば、好きなシグニを採用すれば良いのだ。
続いて2枚目。
よく見ると、ライフが6点に減っていることがお分かりいただけよう。
また、手札(<スイカアイス>×3+<テキソス>)の左に、緑アクセが分厚く積まれた<スイカアイス>が立っている。
高く積み過ぎて、今にも崩れないかと不安だ。
続いて、エナに注目してほしい。
<ツナマヨ>が3枚あるが、敢えて<ツナマヨ>を残しているのがポイントだ。
基本的に、リフレッシュ後のデッキの内訳は以下の通りである。
- Lv1グロウ時、コイン獲得のために消費する手札1枚
- <一蓮托生>のコスト(緑アクセ)
- <ドローフォー>のコスト(緑アクセ)←<スイカアイス>は<ビカムユー>で回収済
- スペルとして使用した、<MOUNTAIN ICE>
- <ディストラクトアウト>のコスト(<ボツリネス>)
つまり、緑アクセ以外のカードが半分程度混ざることとなる。
一方、デッキの中身は、緑アクセが30枚(非LB:<MOUNTAIN ICE>2枚以外の18枚、LB:<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の12枚)だから、75%が緑アクセだ。
初期手札やライフの埋まり方で大きくずれる場合はあるが、基本リフレッシュ後の方が、緑アクセ以外のカードの比率が高い。
ここで、エナに<ツナマヨ>を残しておくと、エナに落としたくない緑アクセ以外のカードを、<ツナマヨ>のアクセ時効果でドローできる可能性が生まれる。
勿論、緑アクセ以外のカードをドローできるかは運が絡むが、リフレッシュ後の方が確率が高くなる以上、<ツナマヨ>をリフレッシュ後に残す方が得策だ。
リフレッシュダメージとして、<ツナマヨ>が落ちているが、このままではデッキ0枚・トラッシュ0枚の状況を作れないため、トラッシュを空にする必要がある。
そこで3枚目。
残るデッキは4枚。
ゴールは目前だ。
最後に4枚目。
これにてデッキ0枚・トラッシュ0枚となり、後はルリグで無限にアタックするのみだ。
この時、エナは6枚、手札は7枚、ライフは6枚の計19枚。
やや多めだが、過度に多いというほどではない。
やはり驚くべきは場だ。
<スイカアイス>1枚に、20枚のアクセが付いているのだ。
ただのLv1シグニだが、<メダマヤキ>(シグニ耐性)、<トロチー>(スペル耐性)、<マヨ>(パワー+2000)等が付いており、なかなか侮れない存在だ。<スイカアイス>が除去された瞬間に、下に付いているアクセがトラッシュに落ち、2回目のリフレッシュに入ってしまうのだが、耐性のお陰でLBに強い点は安心できる。
かくして、「先攻2ターン目の無限ルリパン」は実現可能であることが示された。(Q.E.D)
4.負け筋
勝利への道筋は整った。次は、負け筋を知り、いかに対処するかだ。- <MOUNTAIN ICE>の2枚盾埋まり、ライフトップ埋まり
- 緑アクセ不足で止まる
- 言わずと知れたメタカード
- ルリグ止め
- <アイドル・ディフェンス>
- <スイカアイス>の除去
- <スイカアイス>の無力化
- <トオン>
- ルリグ止め
- ハンデス
- ランデス
ルリグ止め持ちのLBの多いタマや、<トオン>をライフに埋めるデッキが流行っている時に、無限ルリパンを狙うのは得策ではない。
また、事故については、最終盤面の写真で<ツナマヨ>・<トロチー>・<クギニ>がエナに残せ、余裕があること、ルリグデッキに2枚分の空きがあることから、緑アクセ不足となる可能性は低い。
<MOUNTAIN ICE>の盾埋まりは確率は低いながら、<一蓮托生>の瞬間は非常に緊張する。
デッキ内に<MOUNTAIN ICE>が2枚あれば一安心だが、0枚なら負け確定、1枚でもライフトップに埋まっていれば負けである。
ライフに1枚埋まっていると知っている時のリフレッシュの緊張感は凄まじい。
リフレッシュダメージを捲る一瞬、7分の1の敗北・・・ 一人回しで何度ヒヤヒヤさせられたことか。
他にも負け筋が多すぎて絶望しそうだが、他はある程度対処可能である。
「2ターン目に仕掛ける」
この一文が意味するところは大きい。
完全にケアすることは不可能だが、軽減することは可能だ。
そもそも先攻なら、2ターン目に仕掛ければ、相手はLv2にグロウすることなくゲームを終わらせることができる。 複数面に<リンゼ>を立てられる可能性は低く、1面止める手段が用意できれば十分といえよう。
実は、両者は共通の方法で対処可能だ。
1ターン目に<MOUNTAIN ICE>を使用する。 これにより対処可能だ。
わざわざテキストに、「ターンが終了しても能力を得たままである」と書かれているように、<MOUNTAIN ICE>を1ターン目に使用しても、2ターン目の無限ルリパンは可能だ。
勿論、1ターン目に立てた<スイカアイス>を除去されると意味がないため、赤デッキ等の軽い除去手段を持つデッキ相手には使えない。
相手を選ぶが、ピルルク・あーやのような青デッキ相手では除去が少なく、「<スイカアイス>に<メダマヤキ>を付ける→<MOUNTAIN ICE>を使い、相手のカットインの様子を窺う→何らかの手段で<スイカアイス>を戦闘除去から守る」と進めれば、2ターン目はカットインに怯えることなく動くことができる。
もしカットインされなければ、<マヨ>を大量に付けてパワーを上げておくことで、除去の危険性を減らすことができる。
<アンチ>には1エナを要するため、先攻であればさっさと<スイカアイス>に大量にアクセを付けて強化しておくと良い。
これも2ターン目に詰めに行けるデッキならではの利点だ。
後は<スイカアイス>の除去&無力化だが、これには対策を用意しておいた。
その、はずだったが・・・
5.裁定と挫折
使う「予定だった」デッキレシピは以下の通り。「<アレクサンド>を2体並べ、相互にバニッシュ耐性を付与する」 これにより、<火電一閃><ダーク・コグネイト>といった1コストの除去アーツに対処することができる。
バウンスやトラッシュ送りには無力だが、2ターン目の特攻までに、バウンスやトラッシュ送りのコストとなるエナを用意することは難しいはずだ。
「<アレクサンド>は赤シグニの上にしか乗せられないのでは?」
そう思うかもしれないが、メル使いの先人が既に回答を用意していた。
<クギニ>をアクセし、全ての色を付与する これで、<スイカアイス>の上に<アレクサンド>を立てることが可能となった。
また、<アレクサンド>はバニッシュ以外の負け筋も防いでくれた。
実は、<MOUNTAIN ICE>で付与した<スイカアイス>の能力を消されると、「アクセを1枚しか付けられない」というルールに従い、アクセを1枚になるようにトラッシュに送る必要がある。
先に<アレクサンド>を上に乗せることで、<スイカアイス>の下敷きを、「アクセでも何でもない、無意味なカード」に変え、能力を消されても下敷きをトラッシュに送る必要がなくなる「はずだった」
「能力無効化の手段なんて滅多に見ないのでは?」
そう思うかもしれない。
だが、直近で登場したあの1枚は、カーニバル・ナナシ・タマ等多くのデッキで採用されている。
<サーバント ZERO>は<MOUNTAIN ICE>の効果を受けないため、「アクセを1枚しか付けられない」というルールに従い、アクセを1枚になるようにトラッシュに送る必要がある。
ここでも<アレクサンド>が役に立つ。
更に、<アレクサンド>を出せるよう、Lv2ルリグを投入することで、使えるコインが1枚増え、<ソウイキー>を投入することが可能になった。
これにより、単騎の<リンゼ>の妨害や、1ターン目に立てた<スイカアイス>の防御ができるという意味でも、負け筋を減らすことができた。
「完璧だ・・・」
来たるセレモニーに向け、一人回しを密かに進める中、突然道は閉ざされた。
11月27日 帰宅途中
ふと、裁定が気になった。
「<スイカアイス>の上にライズした場合、元々付いていたアクセはどうなるのか?」
リルで、赤シグニ→<アルスラ>→<クロカン>のように、次々とシグニを上に乗せた場合は、元々の下敷きはそのまま敷かれたままだ。
それと同様に、アクセも付いたまま、アクセではない無意味なカードとして下に敷かれる。
勝手にそう思っていたが、ここで衝撃の事実を知ることになる。
公式用語解説にて、「【チャーム】や【アクセ】が付いているシグニの上に【ライズ】を持つシグニを出す場合、その【チャーム】はルール処理によってトラッシュに置かれます。」
チャームやアクセは単なる下敷きではなく、【チャーム】や【アクセ】はそれ自身がシグニに付いているという特性を持つため、付いている先のシグニが消えた場合、アクセの対象を失い、トラッシュに送られるのだ。
「<スイカアイス>にライズした瞬間、大量のアクセがトラッシュに送られ、デッキ0枚、トラッシュ0枚の布陣が崩壊する」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
積み上げた構想が、音を立てて崩れていく。
絶望の淵に叩き落されたねへほもん。
このまま挫けてしまうのか?
それとも、軌道修正を図り、見事新作を世に送り出すことができるのか・・・?
次回「もう一つの無限ルリパン」
デュエル、スタンバイ!