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2018年12月 アーカイブ

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【第282話】このルリグ、無限に殴れるんですか?―エルドラの章―

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    by ねへほもん

    タイトルトップ.jpg
    【第282話】このルリグ、無限に殴れるんですか?―エルドラの章―
    「1止めエルドラって知ってます?」

    この一言で、全てが動き出した。

    ―これは、11月の全てを無限ルリパンに注ぎ込んだ漢による、栄光と挫折の物語である―
    1.発端
    11月8日 都内某所

    何の変哲もない、通常のウィクロスパーティー。
    しかし、とある"噂"が筆者の思考を刺激した。

    「<スイカアイス>に<MOUNTAIN ICE>を使い、緑アクセを大量に付けると、<ディストラクトアウト>で無限に殴れるようになるらしいですよ。」
    無限ルリパン・・・
    理論上可能なことは知っていたが、机上の空論だと思っていた。

    「デッキ・トラッシュを0枚にし、リフレッシュに入らない状態を作る。
    すると、<ディストラクトアウト>のアタック時に0枚落としを宣言し続けることで、ルリグが無限に殴ることができる。」

    デッキ・トラッシュを0枚にするということは、大量のカードを手札やエナに送り込む必要がある。
    1回リフレッシュに入れ、トラッシュをリフダメの1枚だけにしてから、デッキを全てエナに移すのだろうが、落ちたリフダメをどう回収するのか?
    ディストラクトアウト>の、このターンに他のアーツを使用できないという制約に対処できるのか?
    そして何より、例えルリグが無限に殴れたとしても、相手がルリグ止めアーツを入れていたら一発で止まってしまう・・・

    無限ルリパンを決めるには、事前準備に多くのターン数を要するし、ルリグ止めアーツ1枚で止まってしまう。
    実戦的ではないし、他の手段で勝った方が早い。
    そう切り捨てていたところに、今回の噂話である。

    非常に価値ある情報だと感じた。
    「ルリグ止めアーツで止まるのなら、アーツを使わせなければ良い」
    単純な発想だが、どう実現するか?

    ディストラクトアウト>の、他のアーツを使用できないという制限が重くのしかかるが、そこに回答が生まれた。

    「2ターン目に無限ルリパンを仕掛け、相手のエナが貯まる前に撃破する」

    何とも荒っぽい発想だが、「相手が高レベルにグロウし、態勢が整う前に猛ラッシュを仕掛ける」という止めデッキの利点を最大限に活かせるではないか。

    しかし、そんなに上手く行く訳が・・・
    半信半疑ではあったが、物は試し。
    家中の緑アクセをかき集め、試しに回してみることにした。

    2.実現への道筋
    まず結論からだが、無限ルリパンは「成功」した。

    はっきり言って驚いた。
    こんなに容易く実現するとは・・・

    簡単に解説しておく。
    (1)基本ムーブ
    スイカアイス>に<MOUNTAIN ICE>を使用。
    緑アクセの起動能力で、<スイカアイス>に付けることで、<スイカアイス>効果で1エナチャージすることができる。
    この時緑アクセがエナに落ちれば、エナの総量を変えることなく、デッキの枚数を1枚減らすことができる。
    この動きを何度も繰り返すことで、デッキの全てのカードを<スイカアイス>の下に敷くことができる!!!

    ・・・で済めばそれで良いのだが、実際には色々と乗り越えるべき問題が存在する。
    (2)問題と対処法
    エナに緑アクセ以外のカードが落ちた場合
    これが一番の問題である。
    当然ながら、デッキには<スイカアイス>と<MOUNTAIN ICE>を投入する必要があるし、<ディストラクトアウト>を使うための黒エナ要員を投入する必要がある。
    また、0コストでアクセできる起動能力を持つ、LB持ちの緑アクセは<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の3種しか存在せず、最大12枚しか投入できない。

    緑アクセ以外が落ちた場合、<スイカアイス>に付けられない、不要なカードがエナに落ちてしまう。
    では、どうすれば良いか?
    答えは単純だ。

    「初めに複数枚の緑アクセをエナに置いておく」

    つまり、アドバンテージを稼ぐ手段が必要という訳だ。
    スイカアイス&MOUNTAIN ICEの回収
    当然ながら、始動するには、<スイカアイス>と<MOUNTAIN ICE>の2枚が必要となる。
    これを2ターン目に揃える必要があるが、トップドローのみに頼るのは厳しい。
    かといって、両方4枚採用すれば良いかというと、そう単純ではない。

    1番目の問題と関連するが、緑アクセ以外のカードを増やすと、エナに落ちた時の処置が面倒だ。
    可能な限り、緑アクセ以外のカードの採用枚数は絞りたい。
    では、どうするか?

    「サーチ手段を用意する」

    実は、アドバンテージを稼ぎつつ、カードをサーチできるという、都合の良いカードが存在する。
    答えは後で分かるが、それは何なのか、考えてみてほしい。
    リフレッシュダメージの回収
    このデッキは、リフレッシュに入っても、構わず<スイカアイス>にアクセを付け続け、リフ後のデッキ枚数が0枚になるまで継続するのだが、1つ問題がある。

    そう、リフレッシュダメージの1枚分がトラッシュに残ってしまうのだ。
    ディストラクトアウト>を使ったターンには、他のアーツを使用できない。
    一見困ったようだが、便利なカードが存在する。
    鎮護国禍
    10029.jpg
    「アーツを使えないのなら、キーを使えば良いじゃない」

    トラッシュからカードを回収できるキーが存在するのだ。
    更に1エナチャージができ、非常にオイシイ。

    だが、1つ落とし穴が存在する。
    落ち着いてテキストを読んでみてほしい。

    「あなたのトラッシュから無色ではないシグニ1枚を手札に加える」

    カードではない、「シグニ」なのだ。
    おわかりいただけただろうか・・・?

    ―リフレッシュダメージで<MOUNTAIN ICE>が落ちた時点で、敗北が確定する―

    勿論、全ての<MOUNTAIN ICE>がライフに埋まっても、動き出せずに敗北してしまう。
    1枚のみではライフに埋まるリスクが大きいが、4枚採用もまた危険だ。
    2枚が妥当なところだろう。

    しかし、2枚採用でもリフレッシュ後に敗北する博打タイムは訪れてしまう。

    だが、単純な賭けかと言うと、そうとも言えない。
    ウィクロスには、「マリガン」というシステムが存在する。
    もし初手で<MOUNTAIN ICE>を引けたのなら、それをキープすることで、<MOUNTAIN ICE>がライフに埋まる危険性を軽減することができる。
    当然だが、<MOUNTAIN ICE>は最優先でキープしなければならない。

    3.実演
    文字だけの説明では退屈だろう。
    ここからは、4枚の写真を用いて実際の流れを解説する。

    まずは1枚目。
    止めドラ①.jpg
    「多くの緑アクセをエナに置く」「<スイカアイス>&<MOUNTAIN ICE>セットを手札に抱える」
    の2点を目標に動いていく。

    一気に先攻1ターン目の終了時まで進んでいて分かりづらいかと思うが、以下の順序で進める。 道のりは長いが、固定ムーブで迷うことはないだろう。
    ちなみに(1)では、緑アクセが初動で2枚エナにある状態を作りたい。
    片方は<一蓮托生>、片方は<ドローフォー>のコストに必要となるからだ。

    クギニ>を引けていれば簡単だが、引けなければエナフェイズに1枚チャージ+<スイカアイス>に<ツナマヨ>を手札からデコレしても実現可能だ。
    エナだけ考えると、デコレするアクセは何でも良いが、アドバンテージが重要な1ターン目では、可能な限り<ツナマヨ>での1ドローを狙いたい。

    写真では、<猛威継承>後の手札に<スイカアイス>が4枚居るが、勿論こんなに必要ない。
    偶然の結果に過ぎず、緑アクセをエナに、残りを手札にという形で分ければ良い。 また、黒エナ要員に<ボツリネス>を採用したが、特に拘りはない。
    ただ、「対戦相手のすべてのシグニゾーンに【ウィルス】を1つずつ置く」というLBのテキストが、相手の思考を乱せるのではと思っただけだ。
    後、見た目が強そう(どうでもいい)

    但し、黒スペルやサーバントは避けておきたい。
    リフレッシュダメージで捲れた時に、<鎮護国禍>で回収できずに敗北するリスクが高まるからだ。
    上述の通り、LB持ちの緑アクセは<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の3種しか存在しないことから、LB枠に余裕ができやすい。
    よって、LB持ちの黒シグニであれば、好きなシグニを採用すれば良いのだ。

    続いて2枚目。
    止めドラ②.jpg
    またまた一気に進めて恐縮だが、2ターン目に、<スイカアイス>に<MOUNTAIN ICE>を使用し、<ディストラクトアウト>を発動し、緑アクセを付け続け、リフレッシュに入った直後の写真だ。
    よく見ると、ライフが6点に減っていることがお分かりいただけよう。

    また、手札(<スイカアイス>×3+<テキソス>)の左に、緑アクセが分厚く積まれた<スイカアイス>が立っている。
    高く積み過ぎて、今にも崩れないかと不安だ。

    続いて、エナに注目してほしい。
    ツナマヨ>が3枚あるが、敢えて<ツナマヨ>を残しているのがポイントだ。

    基本的に、リフレッシュ後のデッキの内訳は以下の通りである。 5枚中、Lv1グロウ時のディスカードは任意として、他の4枚は緑アクセ2枚と他のカード2枚だ。
    つまり、緑アクセ以外のカードが半分程度混ざることとなる。

    一方、デッキの中身は、緑アクセが30枚(非LB:<MOUNTAIN ICE>2枚以外の18枚、LB:<メーシロ>・<マヨ>・<テキソス>の12枚)だから、75%が緑アクセだ。

    初期手札やライフの埋まり方で大きくずれる場合はあるが、基本リフレッシュ後の方が、緑アクセ以外のカードの比率が高い。
    ここで、エナに<ツナマヨ>を残しておくと、エナに落としたくない緑アクセ以外のカードを、ツナマヨ>のアクセ時効果でドローできる可能性が生まれる。
    勿論、緑アクセ以外のカードをドローできるかは運が絡むが、リフレッシュ後の方が確率が高くなる以上、<ツナマヨ>をリフレッシュ後に残す方が得策だ。

    リフレッシュダメージとして、<ツナマヨ>が落ちているが、このままではデッキ0枚・トラッシュ0枚の状況を作れないため、トラッシュを空にする必要がある。
    そこで3枚目。
    止めドラ③.jpg
    鎮護国禍>を使用し、トラッシュを空にしつつ、デッキトップから<クギニ>がチャージされた。
    残るデッキは4枚。
    ゴールは目前だ。

    最後に4枚目。
    止めドラ④.jpg
    残るデッキ4枚を、<ツナマヨ>2枚をアクセし、1ドロー&1チャージを2回発動させることで、0枚となった。
    これにてデッキ0枚・トラッシュ0枚となり、後はルリグで無限にアタックするのみだ。

    この時、エナは6枚、手札は7枚、ライフは6枚の計19枚。
    やや多めだが、過度に多いというほどではない。
    やはり驚くべきは場だ。

    スイカアイス>1枚に、20枚のアクセが付いているのだ。

    ただのLv1シグニだが、<メダマヤキ>(シグニ耐性)、<トロチー>(スペル耐性)、<マヨ>(パワー+2000)等が付いており、なかなか侮れない存在だ。<スイカアイス>が除去された瞬間に、下に付いているアクセがトラッシュに落ち、2回目のリフレッシュに入ってしまうのだが、耐性のお陰でLBに強い点は安心できる。
    かくして、「先攻2ターン目の無限ルリパン」は実現可能であることが示された。(Q.E.D)

    4.負け筋
    勝利への道筋は整った。次は、負け筋を知り、いかに対処するかだ。
    (1)事故
    • MOUNTAIN ICE>の2枚盾埋まり、ライフトップ埋まり
    • 緑アクセ不足で止まる
    (2)リンゼ
    • 言わずと知れたメタカード
    (3)スペルカットイン
    (4)アタックフェイズ
    (5)LB
    • トオン
    • ルリグ止め
    • ハンデス
    • ランデス
    うち、LBは残念ながら対処不能だ。
    ルリグ止め持ちのLBの多いタマや、<トオン>をライフに埋めるデッキが流行っている時に、無限ルリパンを狙うのは得策ではない。

    また、事故については、最終盤面の写真で<ツナマヨ>・<トロチー>・<クギニ>がエナに残せ、余裕があること、ルリグデッキに2枚分の空きがあることから、緑アクセ不足となる可能性は低い。

    MOUNTAIN ICE>の盾埋まりは確率は低いながら、<一蓮托生>の瞬間は非常に緊張する。
    デッキ内に<MOUNTAIN ICE>が2枚あれば一安心だが、0枚なら負け確定、1枚でもライフトップに埋まっていれば負けである。
    ライフに1枚埋まっていると知っている時のリフレッシュの緊張感は凄まじい。

    リフレッシュダメージを捲る一瞬、7分の1の敗北・・・ 一人回しで何度ヒヤヒヤさせられたことか。
    他にも負け筋が多すぎて絶望しそうだが、他はある程度対処可能である。

    「2ターン目に仕掛ける」

    この一文が意味するところは大きい。
    完全にケアすることは不可能だが、軽減することは可能だ。
    リンゼ
    無限ルリパンまでの限られたターン数で、相手は<リンゼ>を引く必要がある。
    そもそも先攻なら、2ターン目に仕掛ければ、相手はLv2にグロウすることなくゲームを終わらせることができる。 複数面に<リンゼ>を立てられる可能性は低く、1面止める手段が用意できれば十分といえよう。
    アンチ・アビリティ&アイドル・ディフェンス
    2ターン目の<MOUNTAIN ICE>に対し、前者は<スイカアイス>のエナチャージを妨害し、後者はスペル・アーツの同時使用による0コスト防御により無限ルリパンを妨害してくる。
    実は、両者は共通の方法で対処可能だ。

    1ターン目に<MOUNTAIN ICE>を使用する。 これにより対処可能だ。
    わざわざテキストに、「ターンが終了しても能力を得たままである」と書かれているように、<MOUNTAIN ICE>を1ターン目に使用しても、2ターン目の無限ルリパンは可能だ。

    勿論、1ターン目に立てた<スイカアイス>を除去されると意味がないため、赤デッキ等の軽い除去手段を持つデッキ相手には使えない。
    相手を選ぶが、ピルルク・あーやのような青デッキ相手では除去が少なく、「<スイカアイス>に<メダマヤキ>を付ける→<MOUNTAIN ICE>を使い、相手のカットインの様子を窺う→何らかの手段で<スイカアイス>を戦闘除去から守る」と進めれば、2ターン目はカットインに怯えることなく動くことができる。

    もしカットインされなければ、<マヨ>を大量に付けてパワーを上げておくことで、除去の危険性を減らすことができる。
    アンチ>には1エナを要するため、先攻であればさっさと<スイカアイス>に大量にアクセを付けて強化しておくと良い。
    これも2ターン目に詰めに行けるデッキならではの利点だ。
    後は<スイカアイス>の除去&無力化だが、これには対策を用意しておいた。
    その、はずだったが・・・

    5.裁定と挫折
    使う「予定だった」デッキレシピは以下の通り。
    2止めエルドラ.jpg
    そう、筆者の用意していた秘策とは、<アレクサンド>だったのだ!

    「<アレクサンド>を2体並べ、相互にバニッシュ耐性を付与する」 これにより、<火電一閃><ダーク・コグネイト>といった1コストの除去アーツに対処することができる。
    バウンスやトラッシュ送りには無力だが、2ターン目の特攻までに、バウンスやトラッシュ送りのコストとなるエナを用意することは難しいはずだ。

    「<アレクサンド>は赤シグニの上にしか乗せられないのでは?」

    そう思うかもしれないが、メル使いの先人が既に回答を用意していた。

    クギニ>をアクセし、全ての色を付与する これで、<スイカアイス>の上に<アレクサンド>を立てることが可能となった。
    また、<アレクサンド>はバニッシュ以外の負け筋も防いでくれた。

    実は、MOUNTAIN ICE>で付与した<スイカアイス>の能力を消されると、「アクセを1枚しか付けられない」というルールに従い、アクセを1枚になるようにトラッシュに送る必要がある。

    先に<アレクサンド>を上に乗せることで、<スイカアイス>の下敷きを、「アクセでも何でもない、無意味なカード」に変え、能力を消されても下敷きをトラッシュに送る必要がなくなる「はずだった」

    「能力無効化の手段なんて滅多に見ないのでは?」

    そう思うかもしれない。
    だが、直近で登場したあの1枚は、カーニバル・ナナシ・タマ等多くのデッキで採用されている。
    カーニバル -K-
    10009.jpg
    元々あったアクセは引き続き、<サーバント ZERO>に付いているアクセとして扱われる。
    サーバント ZERO>は<MOUNTAIN ICE>の効果を受けないため、「アクセを1枚しか付けられない」というルールに従い、アクセを1枚になるようにトラッシュに送る必要がある。
    ここでも<アレクサンド>が役に立つ。

    更に、<アレクサンド>を出せるよう、Lv2ルリグを投入することで、使えるコインが1枚増え、<ソウイキー>を投入することが可能になった。
    これにより、単騎の<リンゼ>の妨害や、1ターン目に立てた<スイカアイス>の防御ができるという意味でも、負け筋を減らすことができた。
    「完璧だ・・・」
    来たるセレモニーに向け、一人回しを密かに進める中、突然道は閉ざされた。

    11月27日 帰宅途中

    ふと、裁定が気になった。

    「<スイカアイス>の上にライズした場合、元々付いていたアクセはどうなるのか?」

    リルで、赤シグニ→<アルスラ>→<クロカン>のように、次々とシグニを上に乗せた場合は、元々の下敷きはそのまま敷かれたままだ。
    それと同様に、アクセも付いたまま、アクセではない無意味なカードとして下に敷かれる。
    勝手にそう思っていたが、ここで衝撃の事実を知ることになる。

    公式用語解説にて、「【チャーム】や【アクセ】が付いているシグニの上に【ライズ】を持つシグニを出す場合、その【チャーム】はルール処理によってトラッシュに置かれます。
    チャームやアクセは単なる下敷きではなく、【チャーム】や【アクセ】はそれ自身がシグニに付いているという特性を持つため、付いている先のシグニが消えた場合、アクセの対象を失い、トラッシュに送られるのだ。

    「<スイカアイス>にライズした瞬間、大量のアクセがトラッシュに送られ、デッキ0枚、トラッシュ0枚の布陣が崩壊する」

    ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
    積み上げた構想が、音を立てて崩れていく。

    絶望の淵に叩き落されたねへほもん。
    このまま挫けてしまうのか?
    それとも、軌道修正を図り、見事新作を世に送り出すことができるのか・・・?

    次回「もう一つの無限ルリパン」

    デュエル、スタンバイ!

シラクラ杯カバレージ〜最終章〜

    posted

    by からばこ

    決勝.jpg
    シラクラ杯カバレージ〜最終章〜
    どうもからばこです。2回目です。
    ねへほもんさんが掲載し続けている「シラクラ杯カバレージ」ですが、決勝戦のオールスターは私が担当させていただきました。
    というわけで今回は、個人主催の大会「シラクラ杯」のカバレージをお届けします。遅くなって申し訳ないです......。

    シラクラ杯については、こちらをご確認ください。16年世界3位のシラクラさんが主催する大会で、第2回から開催のお手伝いをさせていただいております。
    私の個人ブログに、大会の様子などを書いた記事がございますので、お時間ある方はこちらからどうぞ。リンクばかりですね。

    前置きが長いのもアレなので、早速本編に行きましょう。
    お付き合いください。

    決勝戦 きなこ選手(カーニバル) VS アトリ選手(グズ子)
    VS
    「ここまで来れるとは思ってなかったっす、はい」
    決勝戦まで勝ち上がったきなこ選手だが、試合前の言葉からはどこか自信のなさが滲む。2017年の世界大会で優勝するなど、多くの大会で栄冠を掴んだ身ではあるが、彼の言葉からはいつも「自信」がない。今回も例に漏れず、だ。
    使用デッキはカーニバル。世界の頂点に立った際に使っていたルリグだ。型は現在主流の「ダブルLv5」。<黒Lv5>の<サーバントZERO>化や2枚のキー、<赤Lv5>のアーツ再利用など、幾重にも張り巡らされた防御が強みのデッキ。使い慣れたデッキで、ここまで戦い抜いてきた。

    「最低限の仕事はしたいですね。自信はないけど......」
    言葉の語尾が霞む中、対戦相手を待っていた。


    「え?ばこさんに見られんの?俺見られるとダメなんだってえ......」
    きなこ選手に対するのはアトリ選手だ。彼の言葉もまた、弱気だった。
    そんな弱気とは裏腹に、アトリ選手も輝かしい実績を持つプレイヤーだ。17年の世界大会では3位に入賞し、数々の大型大会を制している。遊々亭ブロガーとしても筆を取っており、紛れもない「強豪」だ。
    カードゲームにおいて、彼の弱気な姿を見たことはほとんどない。「多分俺負けたわ......」と弱音を並べてはいるが、対戦が始まればきっと、いつものように自信十分にプレーする姿が見られるだろう。使用デッキはグズ子。<応援グズ子>と<燐廻転生>のワンターンキルや、<ブラジャック>など黒の遊具を絡めたロングショットなど、トップクラスの攻撃力を誇るデッキだ。

    「(自信は)ない!」 きっぱり言い切って、決勝戦の舞台へと進んだ。
    01.jpg
    (左がアトリ選手、右がきなこ選手)
    Turn1
    先攻はきなこ選手。<タネガスペ>を3枚揃える理想のスタートだ。
    うち1枚をチャージし、グロウ。手札の<ニホニンギョ>を切ってコインを得て、2枚の<タネガスペ>を場に出した。デッキトップから見えた<ノベアン>、サーバントを手札に加え、ターンエンド。上々の立ち上がりだ。
    一方のアトリ選手。ドローフェイズの2ドローを見て、「うーん...」とうなっていた。
    試合前のマリガンは4枚。その後「頼んだぞ!」と別卓の仲間に叫んだことなどから、手札の調子が悪いことは誰が見ても明らか。手札のレベル1は<キノ>のみだ。
    やや考えたのち、<ブラジャック>をエナチャージして<秘密の駄姫>にグロウ。手札を入れ替えると、「お!」と表情が晴れた。下級シグニが揃った。
    1枚の<キノ>に<ペイン・バイ・ペイン>を発動。デッキトップの5枚を公開し、遊具シグニを1体手札に加えるか場に出すのだが、めくれた5枚は、ここでは役割がないカードばかり。
    「えっ、震えた......」。思わず声が漏れるアトリ選手。やや悩み、<ウルシルマ>を手札へ加えた。そのままルリグデッキに手をかけ、1枚のアーツを発動する。
    「<ビカム・ユー>でグロウします」
    先手では黒シグニの回収に、後手では「先後の」入れ替えに。燐廻グズ子が強力とされるゆえの1枚だ。
    グズ子はレベル2へとグロウ。<ハッカドール1号>から<ウルシルマ>を場に出し、残りは埋めずにアタックフェイズへと移行した。シグニで<テンドウ>が、ルリグで<カプスワン>がライフから捲られ、大きな動きなくターンエンド。

    (ライフ)きなこ選手5点/アトリ選手7点

    Turn2
    ビカム・ユー>で後攻を強いられたきなこ選手。
    最速の燐廻ダイレクトを防ぐには、採用しているルリグ止めアーツ<アイスフレイム・シュート>に必要なエナを溜めながら、立て直していかなければならない。
    幸い、手札は上々。場の<タネガスペ>をチャージし、レベル2へグロウ。<カプスワン>を場に出し、そのまま起動効果で<コニプラ>をサーチ。その<コニプラ>の効果で、デッキトップの<トオン>をエナへ置いた。
    アタックフェイズに入り、きなこ選手は何もせず、「終了です」と告げ、ターンを渡した。
    燐廻>などのワンショット系デッキへの戦術のひとつ、ノーパン。アタックを控えてエナを与えず、カーニバル側が盤石な盤面を築き上げてから攻め始めるプランだ。
    きなこ選手の手札には<リンゼ>も見える。<燐廻>に対する立ち回りとしては問題ないように見えたが。

    アトリ選手が小さく頷いた。
    そのままターンが移る。 手札から<ブラジャック>をチャージし、グロウ。<キノ>で<ハッカドール1号>をトラッシュに送り、1ドロー。場は<ウルシルマ><キノ>のみでアタックフェイズへ移った。 <ウルシルマ>のアタックで<キノ>をトラッシュに送りながら1点、ルリグアタックも通って1点。ライフからは特に大きなカードは見えず、きなこ選手のライフは3枚へと減った。 これで燐廻ダイレクトが更に大きな脅威となる。早くも決着の気配が漂い始めた。
    (ライフ)きなこ選手3点/アトリ選手7点

    Turn3
    きなこ選手はサーバントをチャージし、<TN>へグロウ。デッキトップの<ダイホウイカ>を加え、2枚のコインで<カーニバル -K->をアンロック。レベル4のサーバントと<Zr>をサーチし、温存しておいた<リンゼ>を場に出した。
    10009.jpg
    加えて<カプスワン>で<コニプラ>をサーチ。リムーブ権で空いた盤面に<コニプラ>を置きで、デッキトップの<コニプラ>をチャージ。<リンゼ>の正面に<ウルシルマ>、<コニプラ>と<タネガスペ>の正面は空きという状況で、アタックフェイズへ移った。
    ここでも<リンゼ>のみでアタック。アトリ選手の<燐廻転生>を封じ、ターンを渡した。

    返しのアトリ選手。「んー、ちょっと考えます」と伝え、公開領域を念入りにチェックし始めた。
    燐廻転生>が封じられたとはいえ、3枚のライフを奪い去るのはグズ子にとって容易いことだ。既存のシグニと「ダイレクト」で勝負を決めにいく算段をしているのだろう。手札には<ハッカドール1号>+<シャテキ>のセットに加え、赤エナの<ハッカドール2号>も見える。十分の火力が期待できる状況だ。加えて、きなこ選手のエナゾーンには青が2枚未満。採用率が高い<アイスフレイム・シュート>を、今は使えない状況だ。
    見るに、絶好のチャンス。長考の末、手札の<超体感>をエナチャージし、<応援の駄姫>へグロウ。出現時の効果は当たらない。
    不運ながらも手は止まらない。
    ハッカドール1号>から<シャテキ>を出して1ドロー、2エナチャージ。手札の<ニホニンギョ>を場に出し、3体まとめてリムーブ。トラッシュに<ニホニンギョ>が落ち、準備はバッチリ。アトリ選手は手札から<オキクドール><ニホニンギョ><ウズラグ>を場に呼び、アタックフェイズへの移行を告げた。
    パワー2000の<タネガスペ>の正面に<ニホニンギョ>がお目見えし、<オキクドール>は<リンゼ>のパワーを4000に下げながらその正面へ。
    デッキに眠るであろう<ニホニンギョ>のお膳立てはバッチリだ。<ウズラグ>は<コニプラ>を狙っている。各所のハッカドールたちを絡めれば、綺麗に勝利、といったところだ。「アーツ使ってよ」と言わんばかりの盤面と視線で、きなこ選手に訴える。
    02.jpg
    「どうぞ」
    きなこ選手は、その訴えをあっさり突っぱねた。

    確かにきなこ選手は<カプスワン>などでデッキを把握している。残る3枚のライフクロスの中に有効なライフバーストがあるのを知っているのか、それとも単に諦めただけなのか。 やや困惑気味のアトリ選手。息を整え、遊具のシグニへの攻撃を命じる。
    まずは<オキクドール>だ。アタック時にエナの<超体感>を支払いながら、自身をトラッシュに送って<ニホニンギョ>を......。
    「おーん......、困ったね......。対象不在で」
    7枚のライフクロスの中に3枚目以降の<ニホニンギョ>が眠っているようだ。このターンでの決着が思わぬ形で消えたアトリ選手は、場の<ニホニンギョ>のアタックで、パワーが4000になった<リンゼ>を溶かしながら<ニホニンギョ>をバニッシュ。トラッシュの遊具シグニを広げ、「ダメか......?」と苦い声で呟いた。
    トラッシュの<ニホニンギョ>を呼び、<シャテキ>を回収。その<ニホニンギョ>が<タネガスペ>を溶かし、トラッシュから<ハッカドール1号>を釣り上げた。先ほどの<シャテキ>が手札から場に飛び出し、1ドロー2エナチャージ。きなこ選手の場をこじ開けながら、更にリソースを伸ばした。
    そのまま<シャテキ>で1点。アトリ選手はきなこ選手のデッキの残り枚数を確認し、<ウズラグ>で<シャテキ>をトラッシュに送りながら、更に1点。きなこ選手のライフを1枚にまで追い込み、ターンを渡した。

    勝敗を決するライフバーストは見当たらない。
    眠る1枚がそうなのか、単なるハッタリだったのか。勝負は続く。

    (ライフ)きなこ選手1点/アトリ選手7点

    Turn4
    カーニバルが<黒Lv4>へグロウ。場の<ハッカドール1号>をバニッシュしながらトラッシュを肥やす。タイミングよく<メイジ>が落ち、カーニバルの防御力が増した。
    きなこ選手がここから攻勢に移る。残る<レイラ=クレジット>をアンロックし、<ノベアン>で<ウズラグ>をバニッシュ。<ダイホウイカ>とパワーが20000になった<スノロップ>でアタックフェイズへ。反撃の狼煙を上げた。

    涼しい顔のアトリ選手。ライフには余裕があるが、<フーリッシュ・マイアズマ>で迎え撃った。
    グズ子故に選べる3モード。「手札以下バニッシュ」で<スノロップ>を除去し、「場に出るたびー7000」と「レベル3以下蘇生」で<オキクドール>を呼び出した。パワーが4000になった<ダイホウイカ>が、更に−7000されてバニッシュされる。<ノベアン>の前に<オキクドール>が立ちはだかり、あっさりと3面を止めてしまった。
    黒Lv4>のアタックを受け、アトリ選手のライフは6に。まだまだグズ子側が余裕だ。
    返しのターン。場を開けたアトリ選手は、<悲願の駄姫>へグロウ。トラッシュから<ウルシルマ>と<ブラジャック>が飛び出し、<ブラジャック>が更に<ニホニンギョ>を呼び、<マージャン>が手札に舞い込んだ。仕事を終えた<ニホニンギョ>は<悲願の駄姫>のコストで、<ノベアン>のパワーをー12000しながらトラッシュへ。リムーブ権を使わずに自分の場を自在に空ける、<悲願の駄姫>の十八番だ。
    更に遊具たちが牙を剥く。手札の<ペイン・バイ・ペイン>で<ウルシルマ>をバニッシュしながら、5枚のデッキトップから<ワラニン>を回収。空いたシグニゾーンに手札から2枚目の<ブラジャック>が現れた。トラッシュから<オキクドール>を釣り上げて。

    「アタック入って、コインベットで!」
    03.jpg
    ブラジャック>たちが今か今かとアタックを待ちわびる。
    盤面が空のきなこ選手はまさに絶体絶命。1体でも遊具シグニを残してしまえば、ぐるんぐるんと入り乱れ、再び<ブラジャック>が絡む盤面が作られかねない。更にコインがベットされており、この3体を「場を離さずに」除去しなければならない。
    手段は限られている。手段はあるが、ここで使いたくはない。でも使わなければ負けてしまう。

    「<カニキー>をトラッシュに送って、全員<サーバントZERO>にします」

    カニキー>を破棄。場の遊具たちを<サーバントZERO>にし、取り急ぎ<悲願の駄姫>の脅威からは逃れた。しかし盤面は空、ライフは1。<サーバントZERO>たちに殴られて試合が終わってしまう。アーツを使わざるを得ない状況には変わりなかった。
    続けて<アイスフレイム・シュート>を使用。溜まりに溜まったエナで7コストを支払い、<サーバントZERO>になった<ブラジャック>2体を除去しつつ、ルリグをダウン凍結。<燐廻転生>の脅威から逃れることに成功した。残る<サーバントZERO>(<オキクドール>)のアタックは、正面にトラッシュから<メイジ>を蘇生することでキッチリガード。使った手数は多いものの、グズ子の猛攻をしのぎ切った。
    裏を返せば、カーニバルの防御のほとんどを吐かせたといえる。防御の要である<カニキー>は消え、<アイフレ>も使わせた。堅牢なカーニバルの防御をこうも簡単に突き崩していくとは。グズ子の破壊力は、やはり恐ろしい。アトリ選手はそのままターンエンド。
    (ライフ)きなこ選手1点/アトリ選手6点

    Turn5
    きなこ選手は<黒Lv5>へグロウ。<サーバントZERO>とするシグニは、問答無用で<ブラジャック>だ。制圧、リソース回復、連続攻撃。グズ子デッキの全てを担う<ブラジャック>が消えたことで、アトリ選手の攻撃力は大きく落ちた。
    「ジョーカー」で<落華流粋>をルリグデッキに加え、再びの反撃。盤面を<テンドウ><ニホニンギョ><サーバントQ>にしてアタックフェイズ。アトリ選手はすんなりこれを通した。
    gp gp
    テンドウ>のアタックで割れたライフは<ニホニンギョ>。「お前を待っていたんだよ!」と、デッキにいなかったことへの恨み節を吐きながら、アトリ選手が効果処理。<ブラジャック>はおらずとも、<超体感><ニホニンギョ>などがいれば、グズ子の連続攻撃は十分だ。「んー、ちょっとすみません考えます。」と呟きながら、アトリ選手が選んだのは<ウズラグ>だ。
    残るサーバントとルリグの攻撃も通り、アトリ選手のライフは3まで減少。ダメージレースだけを見れば、きなこ選手が追いつき始めたといったところか。

    ただ、アトリ選手の優勢は変わらない。
    返しのターン。盤面の<オキクドール>を<悲願の駄姫>のコストに充て、<テンドウ>を除去。<マージャン>を<ニホニンギョ>の前に、<ウズラグ>を空きシグニゾーンの場に立て、アタックフェイズに。アーツ使用ステップで<超体感>を蘇生した。
    悲願の駄姫>のコインベットはなし。シグニを揃えるだけで、あっさりと王手だ。
    アトリ選手が狙っているのは、<マージャン><ウズラグ>の素材に<超体感>を使っての連続攻撃だ。アタックフェイズの間、<超体感>がトラッシュに送られるかバニッシュされると、シグニ1体がアップするかダウンする。<ウズラグ>の正面は空きで、<マージャン>はアタック時に、正面の<ニホニンギョ>をトラッシュに送れる。どちらかが通れば、アップして2点。ゲームセットだ。

    「えー、ここで吐かなきゃダメかー」と、きなこ選手が苦悶の声を漏らす。
    ウズラグ>の正面に<ジルコニウム>を蘇生し、クラフトした<落華流粋>で<マージャン>をバニッシュ。脅威は去った。ただ、防御に使えるアーツも消えた。アトリ選手はターンエンドだ。

    (ライフ)きなこ選手1点/アトリ選手3点

    Turn6
    きなこ選手のターン。残り1枚のルリグデッキに手をかけ、満を持して<赤Lv5>へグロウ。コインが5枚に回復し、再び<アイフレ>を撃てるようになった。
    ノベアン>で場を空け、<ニホニンギョ><ラアー><タネガスペ>でアタックフェイズへ。<超体感>を<サーバントZERO>にして除去しながら、3面を空けての要求だ。
    アトリ選手はきなこ選手のトラッシュを厳密にチェックした後、「どうぞ」と再び通した。
    序盤にライフを割られなかったからこそ、後半にライフで受けるターンが生まれている。<燐廻>を警戒したきなこ選手の立ち回りが、アトリ選手に猶予を与えている展開だ。
    タネガスペ>のアタックで割れたのは<シャテキ>だ。「よしよしよしえらいぞお前!!」と満面の笑みで、アトリ選手が選んだのは別の<シャテキ>。<ラアー>、<ニホニンギョ>のアタックでも、それぞれ1ドローのライフバーストが発動。ルリグアタックを前に、残るデッキの枚数は2枚となった。

    「完璧じゃないかあれ......!」
    賞賛と諦めが混ざった声で、きなこ選手はルリグアタック。当然のようにサーバントでガードされ、ターンが返った。

    「よっし、ドロー。リフレッシュ入りま......、ってここでめっちゃ来たなおい」
    残る2枚のデッキを引いてリフレッシュ。最序盤の<ペイン・バイ・ペイン>で溜まっていたサーバントたちが、ここで舞い込んで来た。
    「......結構ヤバくね?」と焦るアトリ選手。鮮やかなリフレッシュを決めた先ほどとは裏腹に、表情が硬くなっている。残されたターンは少ない。できればここで勝負をつけたい思いがあるが、デッキがどうも応えてくれないようだ。ルリグデッキ、お互いのトラッシュ、自分の手札。じっくりと眺めて。

    「<スピリット・サルベージ>。<フーリッシュ・マイアズマ>を回収します」
    「サーバント2体を立てて、<フーリッシュ>を使います。出るたびマイナス7000、2ドロー、手札以下バニッシュのモードで」

    唯一の防御、<フーリッシュ・マイアズマ>をここで使った。
    04.jpg
    「えー、そんな使い方できるのか......」
    きなこ選手の声をかき消しながら、<ラアー>をバニッシュ。手札を2枚増やすが......。

    「あれ、引けんなあ......。困った。困ったねえ」
    空いた盤面に<ハッカドール1号><キノ>を流し込み、更に手札を増やすも「引けんなあ......、何でだ?」とぼやくばかり。ここに来てもお目当てのカードが手札に来ない。場の<キノ>に<ペイン・バイ・ペイン>を当てて、さらにデッキを掘り進める。

    「んー、どこ行ってたんだお前は?なあ?」
    散々アトリ選手を振り回し、困らせたカードが、勝利を招きにようやく登場。呆れながら、しかし安心したように、アトリ選手は<ニホニンギョ>を選んだ。
    ニホニンギョ><ニホニンギョ><超体感>を並べ、最後のアーツに手をかける。

    「<燐廻転生>。アタックフェイズ。コインベットで!」
    ブラジャック>が消えてもこの攻撃力。通れば勝ち、通らなければ負けだ。
    「ごめん負けた!」と、ここでアトリ選手のチームメイト、master選手の悲鳴が飛んだ。残るチームメイト、らいだぁ選手は既に勝利を収めている。1勝1敗。この1戦の結果が全てを左右することになった。
    最後のアタックフェイズ。たった1枚のライフクロスを割るために、全力の攻撃を仕掛けにかかった。

    きなこ選手が最後の防御に動いた。<ニホニンギョ>1枚を<サーバントZERO>にし、<赤Lv5>のコイン効果で<アイフレ>を再利用。ルリグをダウンさせ、<サーバントZERO>と<ニホニンギョ>をバニッシュ。できることはここまでだった。
    当然、グズ子はこれでは止まらない。<悲願の駄姫>のコイン効果で、<ニホニンギョ>のバニッシュと同時に<オキクドール>が手札から登場。きなこ選手の<ニホニンギョ>のパワーを4000にし、<オキクドール>がアタック。自らの効果で場を離れ、 「今度こそデッキに、<ニホニンギョ>いるよな!」
    言葉通り、デッキから3枚目の<ニホニンギョ>が登場。<オキクドール>が場を離れたことで、<悲願の駄姫>の効果で<ワラニン>も続いた。連続攻撃は止まらない。
    残る負け筋はたった一つ。3ターン目の場面で、3枚のライフのきなこ選手が攻撃を通した場面が脳裏に浮かぶのか、アトリ選手が一瞬手を止めた。それでも、<ワラニン>が最後のライフを割りに行く。表になったカードは......。

    羅植姫 スノロップ
    トオン>ではなかった。
    超体感>のアタックが通り、ゲームセット。

    「よおおおっし!!!」と駆けつけたmaster選手が喜びを爆発させ、「勝った?勝ったんだな!!」とらいだぁ選手が肩を叩く。
    「優勝した?優勝したぞ!!」。アトリ選手は2人と熱い抱擁を交わし、シラクラ杯の幕が閉じた。


    観戦記
    きなこ選手が取ったノーパンプランは、ワンショットを決めるデッキには有効な戦法だ。<リンゼ>や<アンチ・アビリティ>など、妨害札やコストの軽いアーツで相手のショットをいなしてから、こちらがレベル4や5にグロウし、どっしり戦う。バカラオーラタマや3止めユヅキなど、特に速いデッキに対して一定の効果があるとされており、トーナメントシーンでは必須の立ち回りだ。
    「燐廻グズ子」に対してはどうだろうか。試合後、アトリ選手もきなこ選手も、口を揃えて「(ノーパンは)違った」と答えている。その理由は2つある。
    1つは、ライフクロスを割られないことで、グズ子側に余裕が生まれることだ。カバレージを見ても分かる通りだが、アトリ選手はきなこ選手のアタックを2ターン、ライフクロスで受けている。グズ子側のアーツのうち、<ビカム・ユー><燐廻転生>の2枚は、防御の役割を持っていない。その2枚分の防御をライフクロスで行ったと、単純に考えれば言える。ある程度ライフを割ってプレッシャーをかけつつ、<リンゼ>を絡めて、<燐廻>などを阻止したかったところだ。
    もう1つは、グズ子側のコストパフォーマンスの低さだ。ノーパンでエナを絞ったとしても、<応援の駄姫>へのグロウコストが0ということや、<ペイン・バイ・ペイン>や<シャテキ>の存在から、グズ子側がエナを伸ばすことは容易だ。潤沢にエナを溜められずとも、<燐廻>+「ダイレクト」につながってしまうし、<悲願の駄姫>へのグロウも許してしまう。ここが「燐廻グズ子」のデッキパワーの高さで、対策はなかなか難しい。
    アトリ選手がきなこ選手のライフクロスを1枚に保ち続けていたことに注目したい。ライフが0枚になれば、<テンドウ>で<トオン>を埋めることができるようになり、カーニバル側に1ターンの猶予が生まれる。アトリ選手はそれを知った上で、あえて1枚残し続けていたのだろう。
    「相手のデッキタイプに対する立ち回りを覚えておく」のは、ウィクロスでより高いレベルを目指すために、まずクリアしたいポイントだ。相手のデッキに対して、自分のデッキをどう動かすのが最善か。知れば知るほど、ウィクロスがどんどん強くなれる。
    もちろん、いきなり全てのデッキタイプを覚えるのは不可能だ。自分の周囲で流行っているデッキや、大型大会で入賞しているデッキを調べて、知識を増やしていこう。今回のようなカバレージを読むのでも良い。できることから少しずつで十分だ。自分にあったやり方を見つけ出して、ウィクロスの腕を少しでも磨いていこう。

    デッキ紹介
    燐廻グズ子(アトリ選手)
    deckatori.jpg
    カーニバル(きなこ選手)
    ・deckkinako.jpg
    あとがき
    いかがでしたでしょうか。ねへほもんさんとは違った書き方を目指してみました。拙い部分もあるかと思いますが、決勝戦の雰囲気を少しでもお伝えできていれば幸いです。
    「観戦記」はスポーツ雑誌や新聞などに掲載するイメージで書いてみました。お堅い文体になりましたが、これはこれであり......、でしょうか?

    ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
    カバレージ執筆をご承諾いただいた両選手にも、改めて御礼申し上げます。ハイレベルなプレイングを間近で見ることができ、大変勉強になりました。

    シラクラ杯は今後も開催される予定です。
    私も引き続き運営としてお手伝いするつもりですので、読者の皆様もぜひ、次回は参加してみてはいかがでしょうか。お待ちしております。

    それでは、また次回の更新でお会いしましょう。ではまた〜!

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