誰にでもある、始めた頃の話。
過去の記事はこちらからどうぞ!
思い出させる
「バトルロード☆スプリング2004」で、僕は初めて決勝トーナメント(現代のクライマックスステージ)に進むことが出来ました。立ち止まって振り返ってみると、ポケモンカードに出会って一年が経ったことに気が付きました。
この一年、本当に色々な事がありました。
新しい友人との付き合い、負けられないライバルを手に入れ、行動の範囲も広くなり、刺激的な毎日を過ごすことが出来ました。
そして、僕の隣にはいつも「レックウザex」が居てくれた。
レックウザexを手に入れてから、僕は勝てるようになった。
敗北の山が勝利に切り替わっていくと、僕は強さの実感を手に入れ、更にポケモンカードにのめり込んでいった。
思うように戦える事が、努力すれば勝てる事が、こんなにも素敵で楽しいことだなんて、僕は知らなかった。
レックウザexは僕の切り札、我が魂だ。これからもずっと一緒に戦っていきたい。
そんな彼が、全く通用しなかった。
決勝トーナメントの対戦相手は、僕がこれまで戦ってきた相手よりも遥かに格上でした。
僕は僕なりに必死で追いすがってみましたが、相手になりませんでした。
まるで僕は相手の手の中で踊らされているような...
正直言えば怖いくらいの実力差を感じてしまいました。
そろそろポケモンカードも引退かな?
決勝トーナメントにも進めたし、まあいい切り上げ時なんじゃない?
元々飽きっぽい性格で、いろんな遊び...ゲームで遊んできた僕が、一年同じゲームを遊べたんだから、十分だろ?
そう、僕は元々適当に生きてきた。
都合が悪くなると逃げた。逃げることで解決した。
面倒になると逃げた。時間が解決するのを待った。
馬術だってそうだ。ちょっと人間関係が上手くいかないと、すぐに投げ出した。
でもいいじゃない?それが僕なんだから。自分なりに精一杯やったんだろ?
高校を卒業し、適当な企業に就職し、適当な給料を得て、適当な趣味を見つけ、適当な恋愛をし、自分に合った適当な人生を送るのもいいんじゃない?
その中の少しの部分に「高校生活にポケモンカードを遊びました」って思い出が残るんだ。
僕にしては十分だろう?なあレックウザ...
.........
...ずれた言い訳を考える僕は、情けなくてレックウザを直視出来なかった。
違う違う...そうじゃない。
確かに今までの僕は、それでいいと思っていたよ。
馬術もゲームも適当に上手けりゃいい。冷めて飽きたら捨ててきた。けど...
この一年の冒険は、そんな自分を変えることの出来る冒険だったハズじゃないか。
...真剣に勝利を求め、練習を重ねてきたのは確かに現実なんだ。
ここで負けることを恐れ、逃げてしまったら...もう負けることは無いけど、勝つことも無い。
格好つけて「引退」なんて言うな。その言葉を使っていいのは、燃え尽きるまで戦った奴だけだ。甘えるな。
...レックウザと、少し前の自分に、そういわれている気がした。
心の何処かで、敗北をレックウザのせいにしていた自分が居た。
僕はレックウザに甘えていた。甘え過ぎていた。
これからもポケモンカードで戦うために、僕が考えたこれからのプランは...
レックウザから卒業しよう。
...カードのせいにせず、カードから選ばれ、どんなカードも使いこなす僕になれた時、もう一度一緒に戦ってくれ。
ありがとうレックウザex。君との時間は無駄にはしない。
スパイ作戦
新しいパートナーとなるポケモンを探すことにした僕は、特にデッキを作らずに大会を見学していました。「バトルロード☆サマー2004」まで後3か月。週末だけで数えたら12回、
たったそれだけの時間で、バッファローマンとの実力差を埋めるために僕が思いついた作戦は...
「スパイ作戦」でした。芸は学ぶより盗めってね。
そもそもハーフデッキに関しての構築論は殆ど完璧に出来上がっていたのに、スタンダードは全く分からなかったので、まずは各地で開催されているスタンダードの大会に行ってみることにした。
そうしたら、街のカードショップで行われているスタンダードの大会には参加者が殆ど集まらない現実が待ってましたw
なんてこった。これじゃ盗みようがないw
仕方がないので、月一で当時開催されていた「ジムオフィシャル」という名の中規模大会のスパイ活動に専念してみる事に...
ジムオフィシャルとは...
ショッピングセンターのイベントスペースを使って、ポケモンカード公式が運営した対戦大会の事。
特に優勝者を決めず、一日中フリーで対戦して、ポイントを集め景品と交換するイベントです。
このジムオフィシャルも、ハーフ8割スタンダード2割という現在では絶対考えられない参加者割合ではありましたが、
それでもスタンダードの参加者が10人はいる!奇跡的だw
僕はデッキとは名ばかりのカードの束60枚を持って参加者の列に並び、スタンダードのコーナーに行きました。
対戦相手には申し訳ないが、個々の勝ち負けはどうでもよかった。
スタンダードではどんなカードが使われ、どんな割合、どんな構築なんだろう?それが知りたかった。
だから自分のカードをプレイする事以上に、相手のカードを徹底的に覚えた。
覚えたカードや構築は、(目立って嫌われたくないから)トイレでメモをした。
こんな作業を朝から夕方まで繰り返し続け、かなりの量のサンプルデータを取りました。
その中で、非常に気になるデータを発見しました。
それは、「スタンダードがハーフと比べて、攻撃に移るのが遅い」っていう事実でした。
相手のポケモンがダメージを与えてくるまで、大体4ターンかかるっていうデータが出たのを覚えています。
つまりそれは、現在のポケモンカードと違って、1エネルギー、2エネルギー圏内のダメージ効率が非常に悪く、みんなコンボを成立させてからじゃないと攻撃してこないっていう事でした。
当時は<グズマ>も<フラダリ>も無かったしね。
そういえばカメックスexも、場が完成するまでは、何のデッキかよくわからない位ちんたらしたデッキだったな...
僕のレックウザex+バシャーモも、バシャーモが成立するまで特にやること無かったデッキだったな...
空白の3ターン以内に攻め込むことが勝利につながるのでは無いのか?
さらにベンチの守りが薄くなりがちだから、速攻は相手のコンボを破壊する事にもなるんじゃないのか?
僕はこの気づき...閃きを信じてみることにした。
カードリストを全て見直し、以下の条件にあてはまるものを探した。
①たねポケモンであること
②エネルギーの加速手段のあるタイプであること
③3エネルギーで50ダメージ以上を継続して出し続けれること
④安定して3ターン目に攻撃を始めれること
⑤集めることが不可能ではなく、格好いいこと
そうしたら...いた。
デオキシスexだ。
映画でもレックウザのライバルだ。まるで神が用意してくれていたかのようなポケモンに思えた。
デオキシスexを軸に、メタグロス、エネコロロを足し、速攻を意識した構築のデッキを作った。
対戦相手にはジムオフィシャルでメモしたデッキを再現したものを用意し、練習してみた。
結果...
勝ててしまった。速攻は信じられない位あっさりと決まった。
記憶を頼りにバッファローマンのカメックスex+レアコイル+エネコロロも作って対戦してみた。
それでもやっぱり勝ててしまった。ただ3エネルギー50を3ターン目に言うだけで、付け入る隙はあったのだ。
こうなりゃ「バトルロード☆サマー2004」当日まで、僕の出来る全力で練習するしかない!
学校から帰って部活動のように毎日、毎週、雨の日も照る日も関係なく練習した。
負けない為...過去の自分に戻らない為だ。
そして...やっぱり。ポケモンカードは楽しかった。
デオキシスex
ある日の練習中、ポケモンカード公式HPの更新を見ていると、目を引く記事があった。「ポケモンワールドチャンピオンシップス2004 初開催決定」
アメリカのフロリダ州で今年の夏第一回大会を開催予定だ!各地のバトルロード☆サマーの優勝者を招待するぞ!
って書いてあった。
アメリカ語は全く話せず、興味も無かった。...っていうかスケールがデカすぎて考えることが出来なかった。
フラダンスとかするのかな?飛行機の機内食はお替わりできるのかな?とか、非常にどうでもいいこと考えていた。
世界大会は身近なものでは無かった。てかフロリダってどこよ?
...正直、こんな盛大なフラグだと思ってもいなかった。
丁度一年前の今頃、僕ははじめての公式大会「バトルロード☆サマー2003」に参加した。
一年前の「勝ちたい」よりも、今の「勝ちたい」は、重みが違う。
前回はチャンピオンの座に指が引っかかったんだ、今回は肘までいけるだろ。
いや...チャンピオンになりたい。なるために考え、練習してきたんだ。
誰かの為に勝ちたいのか?って聞いたら、当時の僕はこう答えたと思う。
僕は自分自身の為に勝ちたい。
自分自身を勝ち取るための「バトルロード☆サマー2004」が始まった。
僕が参加したのは、愛知大会のシニア部門。
まずはハーフの予選。3回戦スイスドロー形式。実質三連勝で決勝トーナメント進出だ。
ハーフ予選は慣れたもの。当然だけど、ここまで積み重ねた練習量が違う。無事に三連勝で決勝トーナメントに進出した。
次に肝心のスタンダード。5回戦トーナメント形式。四連勝で「勝利のオーブ」、五連勝で優勝だ。
決勝一回戦、二回戦と、ハーフしかやったことないと言う対戦相手との対戦でした。
三か月前の僕も同じだったんだからわかるよ...突然別のゲームやらされて出来る訳ないよな...
懐かしさも感じつつ、経験の勝利。
三回戦は前回負けた「カメックスex+レアコイル+エネコロロ」デッキでした。
仮にこの時まで、僕が腐ってて練習することを放棄していたら、今現在の僕は無かったと思う。
練習の通りの立ち回りがキッチリ出来て、勝利することが出来ました。
こっからは2018年の今でも、色が付いた記憶としてハッキリと覚えています。
準決勝に進んだ僕は、念願だった「勝利のオーブ」を手に入れる表彰ライン3位に到達しました。
確かに言葉では「勝利のオーブを手にいれた!大満足だ!」とは言っていたと思う。
腹の中は違う。
「絶対に表彰状の文字を1位にしてやる...3位なんかで終われるか」
この時の上位4人のうち、2人の選手が、当時愛知で知らないものはいない超強豪選手でした。
強豪選手っていうか...愛知最強の兄弟選手でした。
当然実績も僕とは比べるまでもなく、まわりのオーディエンスも、彼ら兄弟のお父さんに
「今年の夏は海外旅行ですね!おめでとう!」
って感じで準決勝が始まる前から大盛り上がり。そりゃそうだ。僕らなんて眼中に無いだろう。
まわりの期待や盛り上がりなど知ったことか!
お前らの視界に入る戦いをしてみせる!
準決勝、最強兄弟との戦いが始まる。
ポケモン達...レックウザ、デオキシス...僕に力をくれ!!
ぼうけんノート 第6回に続きます。
次回...たぶん第一部最終回。よろしくお願いします。