遂に18弾環境が開幕しましたね。
筆者の住む関東ではWPSは未開催ですが、遠く関西の地では、発売の週の土日に多くのWPSが開かれたようです。
その結果は、<MPP>と<クリシ>のセット規制を受けながらも、引き続き高いデッキパワーを誇るアロスピルルク、以前から高いデッキパワーを持ちながらも規制を回避し、新ルリグやシグニで大幅に強化された<散華ウリス>が上位を占めるという予想通りの結果でした。
その他、京都のWPSでは<爾改>が優勝したり、グズ子や<ミュウ=フリー>といった新規勢が上位に食い込んだりと面白い環境になっています。
そんな中、ひと際異色を放つデッキが話題になっていました。
その名は「2止め遊月」というデッキで、酷い時には5点ある相手のライフをメインフェイズ中に全て割りきり、そのまま銃声で詰めてしまうという超次元ムーブを決めていたとのことです。
と、あからさまな前振りはさておき、話は3週間前に遡るのであった・・・
(今回は読み物的な話です。デッキの詳細は次週以降に解説しますので、少々お待ちください)
◆デッキ開発の経緯
4月8日 都内某所にて
筆者が2止め遊月を開発した、というよりは開発せざるを得なくなったのはこの日が始まりだった。そう、我が代名詞「1止めエルドラ」が終了宣告を受けてしまったのである。
何度も諦めようと思った。
もう立ち直れないと思った。
でも・・・でも・・・諦めきれないものがあった。
ここは発想の転換だ。ふと頭によぎった。
「自分は1止めエルドラを規制された負け組ではない。1人で地雷コンボを繭の部屋まで送りこんだ勇者なのだ。こんな体験、他の誰にも味わうことはできない。」
と。壊れたら作り直せば良い。デッキは封じられたとしても、自分の発想までは封じることはできない。
その時、新作の開発を決意したのであった。
4月9日 自宅にて
新作の開発に着手。まずはデッキのコンセプトを決めることに。
1止めエルドラの後継デッキということで、似た動きを目指すため、まずは1止めエルドラの特徴を思い浮かべてみた。
「エルドラ」
「LB」
「自分のライフを割ってリソース稼ぎ」
「メインフェイズに相手のライフをクラッシュ」
「ソリティア」
この中で勝利に不可欠な要素とは?
エクゾディアなんてないウィクロスで勝利に近づく手段と言えば1つ。
「メインフェイズに相手のライフをクラッシュ」
これしかない。
・・・が、そんなカードがあったか?
メインフェイズ割りがそうそう楽にできてはマズいので、そんなカードは滅多にない。
そう、「滅多に」ないだけで、全くない訳ではない。
見つけてしまった。
その名も・・・
大火の轢断
決まってしまった。
構築の墓場 -真・2止めエルドラ-
エルドラの後継デッキならエルドラだろう。そういう発想から脳内構築はスタートした。
当然相手はノーパンしてくるだろうから、まずは自分のライフを割り、リソースを増やす手段を考えなければならない。
どうやって?
<ダイナマイト><歯車>頼みは不確定要素が多い上、<バスラ>を使えない以上1枚ずつしか割れない。
一気に割りたい・・・
スイカリン!!!
使うのはLBではない。
テキストを読み返してみよう。
【出】:あなたは手札を1枚捨てる。この方法で捨てたカードが<鉱石>または<宝石>のシグニで、あなたのルリグが赤の場合、ターン終了時まで、このシグニは【アサシン】を得る。
こちらは有名な効果。
Lv2なのにアサシン持ちになれ、おまけに宝石に比べてレアな鉱石だから、<雪月花代>では重宝されている。
・・・が、ちょっと待った。その上に何か書いているぞ?
【常】:対戦相手のターンの間、このシグニがバニッシュされる場合、代わりにあなたのライフクロス1枚をクラッシュしてもよい。
「あなたのライフクロス1枚をクラッシュしてもよい。」だと!???
更に重要な裁定を1つ。
Q:《羅石 スイカリン》のパワーが0以下になった場合の、ルール処理でのバニッシュも常時能力で置き換えられますか?
A:ルール処理のバニッシュの代わりにクラッシュすることはできますが、パワーは0以下のままですので、再度ルール処理によりバニッシュされます。ライフクロスが0枚になるまで何度も置き換えてクラッシュし続けることもでき、その場合はライフクロスが0枚になり、<羅石 スイカリン>がバニッシュされた後に、クラッシュされたライフクロスのライフバーストを好きな順番で発動します。
つまり、<スイカリン>のパワーを0以下にすることで、一気にライフを全て割れる!
決まってしまった。
・・・と思うのは早い。
「相手のターン」に、「自分のシグニのパワーを下げる」手段なんてあるのだろうか?
パワーダウン系のカードには、殆どもれなく「対戦相手のシグニ」の一文が付いている。
だが、「殆ど」だ。1枚も無い訳では無い。
例えばこんなカードがある。
ファイブ・レインボー
発動時、エナに黒いカードがあれば自分のシグニであろうとパワーダウンできるカード。
偉い!でもコストが重い!!!
他に無いものか?
まだあった。
フィア=リカブト
場に出さずとも使えるものがあるだろう?
LBを使えば良いのだ。
LB:ターン終了時まで、シグニ1体のパワーを-10000する。あなたの場に<WIXOSS 【毒牙アイヤイ】デッキ(DIVA)>のシグニがある場合、ターン終了時まで、追加でシグニ1体のパワーを-7000する。(同じシグニを選ぶこともできる)
「シグニ1体のパワーを‐10000する」
相手とは書いていない。これならコストも使わない。完璧! ・・・ってちょっと待て。
どうやって相手ターンに発動させるのか?
一難去ってまた一難。なかなか解決しない。
が、解決策はあった。
SPADE WORK / クロス・ライフ・クロス
<スペード>で<リカブト>をサーチし、そのままライフに埋めてしまえば良い。
おっ、いけそう。
<スペード>で<スイカリン>や<轢断>も回収できるし、エルドラならではと言える。
ただ、相手にノーパンされたらいつまで経ってもLBが発動しないが、どうすれば? ここで最後の一手が飛び出す。
龍・導・波!!!
決まってしまった。
デッキのコンセプトはこうだ。
- <スイカリン>を場に出し、<リカブト>をライフに埋め、<龍導波>のエナを貯めて待機。
- 相手アタックフェイズ。<龍導波>を使い、<リカブト>のLBを発動。<スイカリン>のパワーを0にし、ライフを身代わりにし続けて一気にクラッシュ。途中で<歯車>や<スイカリン>が捲れれば手札が増やせ、<ダイヤブライド>が捲れれば相手ライフを割れる。
- 稼いだリソースを使って相手ターンに暴れる。
<TAP>のLB発動→サーバントをハンデス
<スヴァローグ>のLB発動→ランデス
<バスラ>が無いながらも、<DYNAMITE>単体でほどほどの動きができる。
うん、これで決まりか・・・?
ダハーカは可愛いペット -2止め遊月の誕生-
2止めエルドラのプランは定まったが、具体的な構築に移るまでもなく、欠点は大量に出てきた。- <スイカリン>のパワーを0にするまでが長い
- <スイカリン>で一気にライフを割ったところで、LBが無ければエナが7枚増えるだけ
- デッキに邪魔なパーツが多く、ウェポンを入れるスペースが無い
- ライフ0まで削った後の詰めが怪しい
もっと手軽にライフを割りたい。
もっと安定性が欲しい。
もっとエナを貯めたい
後、詰めの精度を上げたい。
何か手はないものか?
1.ライフを割る手段
<スイカリン>で一気に割るのは豪快ながら、前段階にアーツを2枚消費し、エナコストも考えるとリターンがそれに見合うかは微妙なところ。他にライフを割る手段は無いものか?
一気に割れずとも、手軽に1枚ずつ割る手段があれば、後はLB<スイカリン>やLB<歯車>で補助すれば何とかなる。
「場に出すだけで自分のライフを割れるシグニ」なんて、都合の良過ぎる話だよなぁ・・・
2.安定性
エルドラのように<DYNAMITE>や<ダイヤブライド>、トップ操作の<アグライア>といった不要なカードを入れてしまうと、本来のコンセプトである<大火の轢断>を使いづらくなり、ウェポンが減る分安定性が落ちてしまう。多色デッキだと色事故が起きるし、安定性を考えると構築はシンプルにしたい。
何か良い手はないものか?
3.エナを貯める手段
<轢断>を連打するのにエナが必要。その他色々暴れる上で、エナがあるに越したことはない。
<選択する物語>は当然として、それ以外にもエナチャ手段が欲しい。
何かピッタリのカードは無いものか?
4.詰めの精度
折角ライフを0にしたところで、アタックフェイズで詰めの一撃を叩き込めないと意味が無い。が、アーツが充実した現代において、詰めの一撃を確実に叩き込むのは難しい。
いっそ「メインフェイズに勝負を決めてしまう」手段なんてあればなぁ・・・
まぁバレバレでしょうが、一応答え合わせを。
1.ライフを割る手段→幻竜 ダハーカ
2.安定性→デッキは赤1色
3.エナを貯める手段→龍炎の昇拳のテキストをよく読むべし
4.詰めの精度→西部の銃声
結果
バカラオーラはもう古い? -2止め遊月旋風-
4月10日~22日
筆者の仕事が繁忙期に突入。と言っても、もう社会人4年目で慣れたもの。
2止め遊月というコンセプトが固まった以上、出勤前、帰宅後に1人回ししつつ構築を少しずつ更新すれば良し。
ひたすら1人回しをしつつ、アロスピルルク等の主流デッキへの対策、<コフィン>・<アンダーワン>・<ブルパニ>といったカットイン系の各アーツへの対策を練り上げていった。
平日の仕事は勿論、1止めエルドラの追悼式、矢向チーム戦での優勝とイベントにも参加するも、頭の中は2止め遊月のことばかり。
こうして実戦投入への準備は着々と進められるのであった・・・
4月23日 都内某ショップにて
2止め遊月が密かに実戦の地に放たれた。事前準備が万全でも、実戦に投入すれば思わぬ綻びが見つかるかもしれない。
1回戦。ナナシと対戦。
黒デッキということもあり、<コフィン>をケアしつつ動くことに。
勝てた。 実際<コフィン>が投入されていたらしく、対策は的中。
<コフィン>入りだとまず勝てない、1止めエルドラを超えた瞬間であった。
決勝まで。毎試合10分で終わらせ、そのまま優勝してしまった。
なんだこのデッキは。
ただ試そうにも、18弾発売直後の土日、関東ではWPSはない。
試せねぇ・・・けど試したい・・・
この瞬間、筆者の中で1つの考えが生まれた。
「そうだ、大阪に行こう。」
4月24日~28日
この頃になると、1人回しも殆どしなくなった。というより、そんな時間が無かった。
周りが土日に出勤する程の忙しさの中、29・30日と大阪に行くというぶっ飛んだ発想を実現させるためにも、何とか仕事を終わらせるしかない。
仕事は目途が立った。
ただ周りが認めてくれるかどうか?
・・・職場でもカードゲーマーで知られていたので、普通にゴーサインが出た。
そして決戦の地へ。
4月29日(土) イエサブ難波店WPS
予選
1回戦 雪月花代 〇2回戦 タウィル 〇
3回戦 APEX 〇
4回戦 グズ子 〇
決勝T
1回戦 グズ子 〇2回戦 ミュウ 〇
準決勝 アロスピルルク ×
3決 アイヤイ ×
結果は4位に終わる。
しかし、会場内での反響は凄まじかった。
あまりにも異質な動きに、2止め遊月の噂は瞬く間に広まった。
準決勝のアロス戦は、序盤から相手のライフを削れない苦しい立ち上がりに。
何とかライフを削り、エナ不足が懸念されるも粘って勝負形に持ち込もうとする。
相手はピーピングを使用した後にこちらの手札は4枚。
次のターンには決めてやろうと思った矢先、<クリシ>2連打が飛んできた。
捨てられるのは何???
<西部の銃声>
終わった・・・
2枚投入した<銃声>の1枚が落ち、残り1枚はライフに埋まってしまった。
<スぺサル>で1度は使えるが、<ブルパニ>で止められてしまうため、勝負を決められずに敗北。
筆者はババ抜きに弱かった。
2発撃たないと決まらないのが厳しいところ。
その後の3決では、アイヤイ相手に<轢断>を1枚も引かないという派手な事故を起こして自滅。
事故は地雷デッキの宿命なのであった。
4位に終わるも、デッキの反響は大きく、可能性を感じた1日だった。
まだだ、まだ日曜日が残っている。
明日こそは勝つ。1止めエルドラの後継として名を残すんだ。
そう決意して眠りについたのであった。
4月30日(日) えいきたんくCS
京都、大阪、そして春木と同日に関西の3か所で同時にWPSが開かれた1日。自分は「関西のどこかに2止め遊月が出没する」という怪しい言葉を残し、大会の会場へ向かう。
自分が選んだのは、難波から南へ電車で20分。
関東の人はまず知らない春木駅の近くで開かれた「えいきたんくCS」へ。
そんなマイナーな駅の近くだと、道に迷うと思われるかもしれないが、そんなことはなかった。
筆者の実家から電車で数駅。
会場のドラゴンスター春木店が入っている「ラパーク」というショッピングセンターは、子供の頃によく買い物で行った思い出の場所。
行くのは実に10年ぶり位であった。
1階にドンキホーテ、2階にドラゴンスターが入るなど変化はあるものの、「この八百屋さん昔からあったな!」などと変わらないお店もあり、大会前は密かに思い出に浸っていた。
昔を振り返りつつ、戦いの時はやってきた。
関西遠征2連戦の最後を飾れるのだろうか・・・?
予選
1回戦 リル 〇2回戦 イオナ 〇
3回戦 あーや 〇
4回戦 カーニバル ×
決勝T
1回戦 あーや 〇準決勝 ウリス 〇
決勝 創世タマユ 〇
なんと優勝してしまった。
前日突然大阪の地に降り立った正体不明のデッキは、その翌日にWPS優勝の果実を攫っていったのである。
レシピはこちら。
ウラ話
決勝Tの裏側ではサブイベントが開催されていた。
予選落ちした方に混じり、主催者であるえいきたんくさんも参加することに。
えいきたんくさんは第1回世界大会で準優勝するという実績を持ち、CS主催者としての顔も持つなど関西では知名度の方である。
そんな方が参加したのだから、当然のようにサブイベントでは優勝してしまうという事態に。
イベント主催者にも関わらず容赦がない。
主催者だろうが勝負には勝つという、勝負師としての生き様を見たのであった。
終わりに
いかがでしょうか?繭の部屋改定、セレクター勢の再強化と大きな節目を迎えた18弾最初のWPSでいきなり優勝を飾れ、非常に満足しています。
優勝報告のツイートがRT&お気に入り登録される度、反響の大きさを感じました。
1止めエルドラすら超えた大反響の裏には、彗星のごとく現れ、2日目には優勝してしまうというスピード感が大きかったのだと思います。
今回はデッキ開発や優勝までの経緯を書くに留まりましたが、次回はいよいよデッキの中身や回し方に触れていきます。
あまり流行られても困るというのが正直な気持ちですが、こちらもお楽しみに(^^)/