メタゲーム・ブレイクダウン(てらたか)
初の「2人組チーム戦」となったWIXOSS TAG TEAM GX。残念なことに無断キャンセルが発生し登録時点より数チームが減ることになってしまったが、それでも東西南北あらゆる方向から参加者が集まり、合わせて31チーム62人が集った。主催の集めた豪華賞品を獲得するべく、そして第一回大会の覇者となるべく全力で勝利を目指した彼ら62人が、それぞれのレギュレーションで何のルリグを選択したか、見ていきたい。
あや 5名
カーニバル 2名
花代 2名
ドーナ 2名
ナナシ 2名
タマ 2名
サシェ 2名
ウムル 2名
ウリス 2名
ユキ 1名
リル 1名
ハナレ 1名
アルフォウ 1名
その邁進の原動力は、エクスプロードで発売した<黒鍵の巫女 タマヨリヒメ>だろう。
アドバンテージの取りやすい様々な多色天使、アーツ外防御である<羅原姫 Zr>、そして高い決定力を持つ<先導の堕天使 シェムハザ>。これら全てを詰め込んだ構築が許されたタウィルは、これまで以上の圧倒的なデッキパワーを獲得することとなった。
研究期間の短さゆえか上位4チームに残ることはできなかったが、今後常に意識しなければならないアーキタイプの1つになることは想像に難くない。
今までのノウハウが生きやすいことに加え、5までグロウするタウィルに対して<ブルー・サジェスト>が強いこと、対応力の高さで幅広い相手に対処しやすいことなどが使われた要因だろうか。
採用するキーについてはナナシや同型を見やすい<レイラ=クレジット>の数が最も多かったようだ。
ベスト4にこそ残っていないが、最終戦前の段階で「チームが全勝すれば入賞圏内」という位置に複数のあーやが存在したことを考慮すれば、未だ侮れないルリグであることが伺える。
環境に合わせて細部を変更しやすいのもこのデッキの強みだ。
アンリミテッドセレクター発売以降常に使用率トップ付近をうろついていたカーニバルが、とうとう使用者2名という少数派になった。
赤宇宙のギミックの関係でカードパワーの高い構築を作りやすいこのデッキも、使用キーほぼ固定・強力シグニは限定付きばかりというここ最近の新弾状況では構築が代わり映えしづらい。
しかし、そんな中で優勝したのはカーニバル。<鎧終一触>+<ビカム・ユー>などのマウントが取りやすいパッケージを切り捨て、防御アーツを厚めに採用した構築がこのエクスプロード環境大会を制すこととなった。
再設置阻止能力を持ったナナシや防御能力をどんどん増やしていく周囲のデッキに合わせ、アーツでの防御面数を引き上げる構築も今後数を増やしていくのかもしれない。
いずれもLv4でグロウを止めるタイプであり、<黒鍵の巫女 タマヨリヒメ>の力を得て、これまで採用が難しかった<THREE OUT><ジャイアント・キリング>などが無理なく採用できる型になっている。
<マイプラ><ポレン>を使った圧倒的なダメージレースの先行から始まり、4にグロウしてからは再配置不可を利用したアグロと<羅菌姫 ボツリネス>の貯菌を利用した耐久寄りなスタイルを使い分けられるのも強みといえる。
優勝したカーニバルが5戦全勝と快進撃を続けていた所にストップをかけたのもナナシであり、今後増えるようであればカーニバルは苦しい立場に立たされることとなりそうだ。
圧倒的な決定力を持つ<期之遊姫王 †ブラジャック†>+<緑伍ノ遊 フラコスタ>、<紡ぐ者>にグロウするまでに足りなくなりがちな防御能力の隙を埋める<エニグマ・オーラ>、アドバンテージを稼いで盤面を整える下級遊具、という単純明快な構造をしているこのデッキだが、各ルリグの象徴ともいえるこれらのパワーカード同士がシナジーを形成しているのだから弱いわけがない。
遊具型の<紡ぐ者>から派生したプレイヤーズデッキの極致といえる物に仕上がっており、当大会ではチーム成績第3位、個人成績6勝1敗での入賞を果たしている。
新弾で強烈な強化が来たわけでもなければ、分かりにくいシナジーが存在しているわけでもない。ただ、ルリグアタックに<幻怪妖姫 タマモゼン>、黒ルリグに<幻怪 フゥライ>、スペル軸に<幻怪姫 ネコマター>。下級のアグロに<幻怪 ケセパサ>で起動能力に<幻怪 ベンザイテン>という、溢れんばかりのメタカードを十全に扱うことが求められる。
そんなドーナは、苦手とされるカーニバルが数を減らした当大会をしっかりと勝ち上がり、見事に第4位の位置についた。
2名いるドーナのうちもう片方は一時期環境を騒がせた3止めドーナ。
<幻怪 ヒトダマ>で<轟砲 ウルバン>のクラスを怪異にするやいなや、豊富なメタカードを横に置いた<幻怪 フゥライ>に詰め込めるだけコピーさせ、後はレイヤーでそれを引き継いだ<ウルバン>がキーの効果を受けてライフを一気に消し去るという強烈なワンショットで、こちらも入賞圏内に残るデッキだった。
多種多様なショット手段が生まれると同時に、それを受ける手段が広がったことを印象付ける結果となったようだ。
キーセレクション強化弾は、もちろんキーセレクション基準でメインデッキのカードが刷られているため、オールスターのメインデッキへの影響は薄い。今までに登場したメインデッキのカードでも、オールスター水準で活躍しているカードはそう多くない。
その一方で、主にアーツやキー、新規にコインを獲得できるルリグなどは、毎弾毎弾オールスター環境に影響を与えている。特に、ルールに干渉できるカードが与える影響は非常に大きいといえる。<白滅の巫女 タマヨリヒメ>、<カーニバル -K->、<セレクト・ハッピー5>。
今回の弾においては、<黒鍵の巫女 タマヨリヒメ>が、まさにメタゲーム変化の"鍵を握る"こととなった。
このキーと相性の良いタウィルやナナシの進出はもちろんだが、"黒ルリグ"に対して黒シグニを手札に揃えられることから良相性な<紡ぐ者>が3位入賞したこと、カーニバルが数を減らしたことによるドーナの入賞、これらも環境の変化と決して無関係とは言えないだろう。
東西あらゆる地方からプレイヤーが集まった当大会の環境はメタゲームが読みにくく、だからこそ純粋に強化されたルリグが増え、それを刈るデッキが勝ち上れる環境になったのではないだろうか。
メル 6名
華代 5名
ウムル 3名
ミュウ 2名
ゆうり 1名
カーニバル 1名
リル 1名
ユヅキ 1名
グズ子 1名
ユキ 1名
翠子 1名
<魅惑の冥者 ハナレ>+<幻竜 ボラゴ>に序盤のダメージソースを一任でき、序盤のラインを高パワーシグニで揃えられるこのデッキは、キーセレクションにおいて重要である3t目までの殴り合いで非常に有利だ。
それに加えて<幻竜 アン=ミラ>を始めとした優秀なダメージソース、ルリグが持つディスペアのおかげで平均以上にある防御回数、後は相手のリソースを搾取する能力とどこを取っても非の打ちどころがなく、デッキパワーはとても高い。
行動パターンが一本道にしやすいことも長丁場である大型大会においては見逃せない一手だ。考えることが増えると、人間はどこかで必ずミスをしてしまうから。
第4位に1名、入賞圏内にもう数名がおり、また当大会サブトーナメントのキーセレクション大会においての優勝もウリスとなっている。
前弾オルタナティブから、『新規ルリグはその強化弾と過去弾を組み合わせるだけでかなり環境で戦えるようになる』という傾向があり、メルも<真・遊月・鍵>による序盤のリソース面火力面両方のバックアップ、複数のバニッシュ耐性付与効果、高パワーラインとエクスプロードだけで戦えるようになっている。
ウリスがパワーマイナスによるバニッシュをメインとしたデッキであり、バニッシュ耐性がそれに強く出やすいというのも使用者が増える一因になったと思われる。
過去の<轟炎 花代・爾改>を彷彿とさせる下級のアグロ能力、<炎真爛漫>による強い制限力が特徴で、このルリグが増えることを見越してデッキ内サーバントのレベルをばらけさせたという構築は非常に多かった。
序盤にどうアドバンテージを取っていくか、採用している除去アーツは何かなどの細部は異なるが、<時雨の調 ゆきめ>+<炎真爛漫>によってアーツ制限+バーニングで相手より一手先に詰め切ることを狙ったリストが主流だったようだ。
<アンシエント・グルーヴ>により早い段階からマウントを取り、<コードメイズ スカイジュ>+<コードラビリンス アトラン>などによる相手の弱体化などを活用して常に有利な状況を作っていく、コントロールに重きを置いたデッキとなっている。
入賞圏内にいた2名が使用していたのは、どちらも<コード・ピルルク APEX KEY>+<ゲット・アヴァロン>のパッケージを採用した防御力重視の型だ。<GF リュック>の壁としての優秀さや<GF コンパクト>という相性の良いシグニを生かした構築となっており、スペルを採用したシグニ寄りコントロールといえる。
カーニバルは使用者1名の最小母数ルリグだったが、その1名が6勝1敗という圧倒的な成績を収めて優勝を果たした。
従来の<メイル・ストリーム>を使用した型と違い、今回入賞したのは単体でダメージソースになる<コードアクセル ファイトラ>+赤エナを利用して手札を稼げる<焚発する知識>を採用した型だ。
新規カードごとに役割がほぼ決まっているエクスプロード組・オルタナティブ組に対して<カーニバル †MAIS†>の能力が有利に働く点、重いLBとアーツが早いデッキに対して強い点などは見事に環境とマッチしていた。
その構築は、前日に秋葉原で開催された大会でゲスト参戦していた元世界王者master氏の構築とほぼ同じだ。緑ルリグ特有の膨大なエナを<聖援の使者 サシェ> によるサーチ力に回し、早期からダメージソースを維持し続けるものとなっている。
もうひとつ特筆すべき点は、エクスプロードで登場した非限定Lv4微菌シグニの<羅菌姫 カルシ>と<羅菌姫 プロテイン>により除去耐性持ちのアタックトリガーシグニが終盤の決定力を強化しているところだ。
エクスプロードで発売された数種類のルリグのための強化を上手く吸い取り、このデッキとその使用者を準優勝へと押し上げた。
特に前環境でメタ格にいた夢限は華代流行の影響で一気に使用率を落とし、また白ルリグの使用者数は全体合わせてユキ1名のみと非常に少数となった。
新弾ごとに考えなければいけない対面が増え、メタゲームが大きく動いていることが見てとれる分布といえるだろう。
前環境から安定して強いウリス、新環境で続々と入賞を繰り返す華代は現環境を象徴する二大巨頭で、どちらもしっかりと上位チームに残っている。
そんなメタゲームの中で、カーニバル・翠子のワンツートップは快挙といえる出来事だ。
特に素晴らしいのが、どちらのデッキも開発段階で考えられていたであろうアーキタイプとは確実に違うリストでの入賞という点である。
キーセレクションは「新たなWIXOSS」とでも言うべき位置付けであり、デッキ同士で大きな差が付きすぎないようにかなり入念にカードが刷られていることが伺える。それは裏を返せば、事前にデザインされたデザイナーズ系のリストが単純に強く、出回りやすいということだ。
事実として、最大手であるウリスはおそらく99%デザイナー達の考えたコンセプト通りの戦い方をしているだろうし、二番手のメルもそうだろう。三番手の華代はルリグデッキが多いぶん多少戦法にばらけは出るだろうが、それでもメインデッキに想像を大幅に超えるような強化は投入しにくい。
四番手のウムルになってようやく多色を混ぜた(恐らく)プレイヤーズ的なコンセプトが登場するが、<コード・ピルルク APEX KEY>の発売のタイミングからすればウムルにおけるスペル+<APEX KEY>という形自体はデザイン段階で考えられていた可能性が高い。除去スペル+<コード・ピルルク APEX KEY>という組み合わせも多分デザイン段階で想定されており、良くて「デザイナーズの想定同士を上手く組み合わせたもの」という位置付けになるだろう。
しかし、ダメージソースと手札リソースやデッキの循環のために<メイル・ストリーム>+<忍の御頭 ハンゾウ>+<応諾の鍵主 ウムル>というデザインされた構築を破壊したカーニバルは、明確にカーニバルというルリグをデザイナーズの呪縛から解放した。
時を同じくして、これまでは「序盤からアーツを使ってアーツ対応のシグニを強くしろ」と言わんばかりだった翠子も、<聖援の使者 サシェ>+微菌シグニによる安定感と決定力の増加で、とうとうデザイナー達の思惑を超えたであろう構築が生み出されるに至った。
エクスプロード環境に来て、キーセレクションはようやく『プレイヤーズデッキがデザイナーズデッキを超える』土壌を手に入れることに成功した。当大会は、それを痛烈に知らしめる結果になったといえるだろう。
最後に
如何でしたか?カバレージ、メタゲームブレイクダウン共に読み応えがありましたよね。
僕はありました。
僕がこういうの読むのが大好きなんで、ウィクロスにもこの文化がもっと浸透すると嬉しいですね。
それでは"第2回 WIXOSS TAG team GX"でお会いしましょう!!
最後まで読んで頂きありがとうございました。
そして95%位記事書いてくれてありがとな!!